「IA」という街

 「ボカロ」の曖昧さが創造性や拡張性を生む一方で、一つの基準によって特定の場所に光を当て、輪郭を出し、小さく切り取ることもできました。  「IA」は、ランドマークの大きな影がかかりながらも、個人的に好きな作品がたくさん集まる場所になっていました。  わたしが見ていたのは、曖昧で聴きなじんだ「誰のものでもない声」に、作り手の想いが溶けだしたような繊細な作品たちです。    暮らしの中から、人生の中から、心の中から、言葉や感情が吐き出され交差する場所でもありました。  消えていくもの、忘れていくこと、「街」に起こる変化やそれに伴う痛みであっても美しい歌にしてしまえる「IA」の声は、「誰かの声」に変わりながら、ひとりひとりの内側に秘めた構造や個性を立ち上げるもののようでした。